校舎の天<そら>では悪魔が嗤っている感想 28話目

ネタバレ感想

片腕を切られた状態で地下に向かう瞭。

彼女が向かった部屋の中には……二人の生首が保存されていた。

一つは瞭の娘・るいのもの。
そしてもう一つは、かつて瞭が怒り、憎しみ、その末に自らの手で殺めたドライツェンのもの。


瞭は容器に入った愛する娘の首に語りかける。しかし、彼女の背後に人影が……。


部屋に入ってきたのは仁美だった。

瞭は仁美に対してわざわざ瞳と呼び直しましたが、夜見野あきらが偽名だったのと同じように、仁美も偽名だったということでしょうか。


瞭は問う。なぜ自分を裏切ったのか。娘の為に創った存在がなぜ刃向かうか。


仁美の目的は自らを創った瞭とドライツェンの罪を島ごと浄化する事にあった。

しかし浄化って具体的になにするんでしょうかね? 例のヤバイ薬ボールで生徒達を同士討ちさせるだけとは考えづらいし、封印って言葉を使っているのを見ると、前作の5巻ラストみたく島ごと心中する心持ちなんでしょうか。



仁美の言葉を聞いた瞭は烈火の如く激昂する。

鬼気迫る表情、荒々しい勢いに溢れたタッチ。
そして普段彼女がクールな態度と言葉遣いの裡に秘めていた、世界全てに対しての底なしの憎悪と憤りが飾らない乱暴な言葉で表現されている。

作中を通して、僕が一番好きなシーンをあげるとしたら多分このページです。


仁美は主人公サイドのようなまともな倫理観をもって行動していた……と見せかけて、この女も実はヤバそう。

安寿だけを人間と認め、「あの方」とまで呼んでいる。本名が瞳であることも明かされた以上、元ネタが邪眼と関係しているサリエル説が一気に濃厚になってきましたね……。


怒りに任せ襲いかかろうとした瞭を、仁美はメスで一閃。瞭がドライツェンに切りかかった時と似ている気がしますが、因果応報という事でしょうか。


瞭の最期の表情は柔らかく、かつての良き母親であった時のそれに戻っていた。


そして仁美の口から語られる事実。
瞭の本名は「蜂屋瞭」である、と。

……って、この人も蜂屋姓なの!?


自分の色が見えていた辺り、前作の蜂屋あいの上位互換みたいな感じですが、あいの世代では異能の血が薄まってしまったせいなんでしょうか?


しかも仁美、……仁美達は瞭の実験体であり、人の形を模した模造品とのこと。
背景のシルエットに見覚えのあるやつがチラホラいますし、今までの瞭の謎の上から目線もそういった事情によるものでしょうね。

しかし、仁美が模造品と言うことはその姉妹のいつ花も……。



一方、ナナと安寿の方も急展開を迎えてました。

ナナの過去をなぜ安寿が知っているのか、「あなたはあなたの代わりに死んであなたになったの」の真意、いつ花がなぜ急に安寿に従順になったのか。

色々謎を残す終わり方ですが、期待しつつ次回を待つとします。



余談だけど、ガブリエルが蜂屋を庇って刺される流れは多分前作オマージュ。

瞭というキャラについて


僕はこういうキャラが本当に好きなんです。
死以外に救いがないような、どうしようもなく報われないけど何とか世界に抗い挑もうとするような、そんな激しくも切ない人間が好きだ。



確かに彼女が行った非道な実験の数々は褒められたものでないし、本人も内心思っているように地獄行きは不可避だと思う。

けれど、じゃあ自分が彼女と同じ立場だったら。
自分が彼女だったとして、どう行動するのが正解だったかと問われると、これが難しい。


確かに瞭は特殊な力を持っていました。とはいえ、ドライツェンの襲撃の際にろくな抵抗が出来なかった辺りからして、自分を取り巻く世界に対してどうこうできる類いのものではなかったのでしょう。

だから瞭とるいは、世間の目に怯えて隠れ住まなければいけなかった。

それなのにドライツェンという外来者に隠れ家を暴かれ、良好な関係を築いていたはずの島民達にも手のひらを返された。
瞭は出来る事を全部やって、なんとか穏当な方法で世間の目から娘を守ろうとしたにもかかわらず、ついにそれは叶わなかったのだ。


瞭という一人の女性にとって、とれる行動の選択肢など高が知れていた。
前話で安寿が言っていたように、理不尽に対して抗うには、一人の『人間』でしかない彼女の力は弱すぎた。

瞭がどこに隠れようが、恐らくドライツェンは機関の力でもって彼女を見つけ出していたでしょう。

そこからの展開に関しても、機関に拘束されていた以上、瞭の自由になる瞬間など存在しません。



彼女が鬼になり人の道を踏み外す決断に至るまでは、実質一本道だったと言えるでしょう。



娘のるいは(過去編の天真爛漫な様子を見る限り)恐らくこんな形での蘇生を望んではいないでしょうし、仮に本当にるいが蘇った所で彼女達親子にとってハッピーエンドになるかは非常に疑わしい部分があります。

先述の通り、娘の死が避けて通れぬ運命である以上、瞭が鬼とならず人間として生涯を終えるには自害、もしくは最初から母娘で心中する位しか無かった。
自分以上に大切な娘を失ってなお、敵だらけの世界で一人で『真っ当に』生きるという選択肢は、彼女にとっては到底救いとなり得ないでしょう。

つまり、彼女にはどう足掻いても死以外の救いなど無かったと言える。


自分の運命すら見えていたにもかかわらず、彼女は諦めようとしなかった。容姿や性格こそ変われど、根底の部分では今も昔もただ娘の幸福だけのために、抗えぬ運命に抗おうとしていた。エモすぎませんか??

この話は実質、瞭の物語であると言えなくもない。
瞭の娘に対する愛さえ無ければ、安寿を含んだ多くの登場人物は生まれてすらいなかったし、誰も実験によって不幸になる事もなかった。

瞭の死に際の安らかな表情は、世界に拒絶され続けてきた彼女が、ようやく人並みの救済を得た安堵によるものだと、僕はそう思いたい。

コメント

  1. 遥田菜野 より:

    この回は切なかったですよね……
    そういえば、ガブリエルこと白崎百合乃は
    結局誰ポジションだったのでしょう?
    葉月さんの予想でいいので教えて下さると
    嬉しいです。